◇今週も建設・電設関連の話題をお届けします
今週はまず、この話題から--。
大和ハウスとトプコンが11月25日に共同記者会見を行い、両社の協業で「現場のデジタル化およびデジタルツイン技術の創出を目指すデジタルコンストラクションプロジェクトを始動する--」と発表した内容が、建設関係者の間で、話題を呼んでいます。
このプロジェクトが目指すのは、デジタル技術の活用によって、建設現場における設計・計画、施工、維持管理の各工程が繋がるデジタル基盤を活用。それによって工程プロセスの最適化を常に実現できるとともに、施工品質の高水準化が確保される--そんなシステムの実現です。
このシステムの基盤になるのは建物のライフサイクルを可視化するデジタルツイン技術で、この技術が建物の状態を常に報告してくれるため、無駄な作業が省かれる、そのことによって人員確保の悩みや、高齢化の進む技術者・技能者などの労力負担を軽減化するなど、働き方改革にも資する高度な技術である旨がアナウンスされています。
今後の推移が期待される、日本ならではの画期的な技術開発に向けたニュースです。
JR各社や私鉄各社がこのところ首都圏の終電時間の前倒しを次々と発表しています。
その背景には新型コロナ禍の影響による深夜帯の鉄道利用者の減少、鉄道事業従事者の働き方改革への対応など、いくつかの理由が絡まっているようです。とくに首都圏のJRと私鉄、地下鉄などは現在、相互乗り入れが活発に行われているため、ダイヤ改正などはもはや1社だけの対応ではできないという事情もあるでしょう。
同時に鉄道関連の保守・点検作業は終電と始発の間で行うのが鉄則。昨今の労働力不足の影響で、従来のような短時間で効率よく工事を行うのが難しくなりつつあるという事情もあるようです。
その他、理由はさまざまにあるようですが、首都圏の鉄道の終電時間の前倒しは、各方面に影響が出てきそうです。
酒の提供を伴う飲食業の時短はすでに恒常化しつつありますが、終電の時間が早まれば、今も深夜まで営業を続けている飲食店には打撃です。12時ぐらいまでは飲んでいたという人も、10時過ぎ頃から気もそぞろになるかもしれません。いっそのこと、食事だけして早く帰宅しようという人が現在以上に増えることも予測されます。
また、ただでさえ利用客が激減しつつあるタクシーのドライバーにとっても、新たな死活問題が生じそうです。
このようにして世の中が「昼間主体」になっていくことが恒常化すると、文化・文明的なレベルでの影響も出てくるかもしれません。たとえば明治の文明開化は、夜間の闇を昼間のように明るくする「電灯」の技術がかなりの部分を支えていたといっても過言ではありません。
安定的な電力供給による電灯技術の進化は、労働時間を長く確保することを可能にし、労働環境の幅はその分、時代を追うごとに広がってきました。
24時間対応が可能なインターネットの出現で、グローバルなビジネス展開が可能になり、近年の世界を覆うトレンドだったグローバリズムの潮流を支えてきました。それが今や過去のものになろうとしているのでしょうか?
このように労働時間の長期化を促してきた文化・文明の現代技術は今、新型コロナ禍により、その在り方が根底から問い直されようとしているのかもしれません。鉄道の終電前倒しは、大げさにいえば、これまで通用していたグローバリズムに、新たなカタチを求める状況の先駆けになるのかもしれませんね。