◇今週も建設・電設関連の話題をお届けします
9月21日付け日刊建設工業新聞によれば、大成建設と東京理科大学のコラボで「人のもつ明るさに対する感覚を考慮し、室内照明が自動的に照度を最適制御するシステム」が共同開発されたとのこと。
必要な照度を常に維持・確保しながらも、絶えず省エネが図られる画期的なシステムとして話題を呼んでいるようです。
このシステムの利点は、単に「省エネ」がなされるということに止まりません。「人のもつ明るさに対する感覚」とは、すなわち感覚的に無理のない照度ということで、それは視覚を通しての健康維持にも繋がってくること、それがいちばんの利点なのかもしれません。
健康維持に繋がる照度が常に制御された状況は結果的に、仕事の効率化にも繋がることでしょう。
この「明るさに対する感覚値(人が最も心地よくいられる照度など)」の算出のため、多くの被験者に対して、天井および窓から得られる光の度合いをモニタリングしたそうです。
その結果、開発されたシステム装置の名称は「ティー・ブライトネス・コントローラー」。人間にとって心地いい照明とは何か。その真髄がこうした装置の研究によって、今後、より精密に制御されていく世の中は案外間近に、近づいているのかもしれません。
9月20日付け朝日新聞デジタル版によれば、岐阜県立岐阜聾学校高等部3年生(野村光正君)が、このほど、第二種電気工事士試験に合格。岐阜聾学校では開校以来の快挙と話題になっているのだそうです。
第二種電気工事士の試験そのものには、耳の聴こえは関係なく受験できますが、試験場では試験官の合図の声などが聴きづらいことなどから、なかなか難しい部分も当事者にはあるようです。また、現場でも現場代理人や電工さん仲間、時には施主などとのコミュニケーションをとる必要も少なくないことなどから、若い世代の聴覚障害者にはとくに、電気工事士の仕事は敷居が高いところがあるのかもしれません。
しかし、恐らく難聴などの持病がありながらも、現場で支障なく働いている電工さんもそれなりの人数がいるものと推察されます。
視覚障害者はまた別の問題が出てくるので難しいかもしれませんが、そういう意味では、試験会場などでちょっと受け入れ側が工夫(試験官の合図の方法など)を凝らせば、聴覚障害を持っていても電気工事士を目指す人の数は増えるのではないでしょうか。
電気工事士の仕事のすそ野を広げるだけでなく、試験会場のいろいろな意味でのバリアフリー化は、電気設備工事という仕事のすそ野をもいろいろな意味で広げていくのではないでしょうか。
聴覚障害を持つ人には、独特の集中力があると聞きます。そうした人材も幅広く受け入れるための努力をすることで、電気設備工事業界の基盤はより強固なものになっていくような気がしてなりません。
また、これは聴覚障害者に限りませんが、さまざまな障害を持つ人には、現代の建設技術に不可欠なバリアーの除去に対する、自らの体験に根差した貴重な意見があるはずです。そういう意味からも、業務に支障のない程度の障害を持つ人にも、広く門戸を開放していくことには意義があると考えます。
業界団体にはぜひ、試験会場の在り方や試験の方法からスタートして、いろいろな障害を持つ人材の受け入れについて、柔軟な姿勢で取り組んでいただきたいものです。電気設備工事業界が本当の意味でのエッセンシャルワーキングになっていくための、それも一つの試金石になるのではないでしょうか。